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県議会奮戦記 >>> 2006年2月県議会知事提出議案第1号ほか12件の反対討論

2006年2月県議会知事提出議案第1号ほか12件の反対討論
2006年3月17日

 日本共産党の長谷部淳です。
 日本共産党を代表し、議案について意見を述べさせていただきます。

 まず、議案第1号の予算案のなかに、へき地医療支援機構を核としたへき地医療対策、県民の生活交通について、デマンド型タクシーなどの事業も新たに支援の対象としたこと、沿岸自治体が行なう津波避難計画や津波ハザードマップ作成への具体的支援、人と車が共生し、人と人がふれあう新しい時代にふさわしいまちづくりの検討の開始など、県民の願いに応える多くの施策が盛り込まれていることは当然に評価するものです。

 県民一人ひとりの暮らしや、その暮らしを支える市町村へのこうした施策の展開をきめこまやかに進めることこそ、県政の柱として、太く貫かれるべきだと思います。

 評価すべきものは評価することを前提に、問題点を指摘するものです。

 何よりもまず、県民の暮らしがどんな状況にされようとしているなかでの予算編成なのか、という点です。
 一般質問でも指摘したように、小泉内閣のもと、平年ベースですでに約6兆7千億円の負担増が実施され、またすでに決められて今後3年間で実施される負担増が3兆9千億円、そしていま国会で審議中の来年度予算案では3兆円近い負担増であります。

 そのもとで経済格差が広がっていることは県民の実感としても、また種々の統計によっても明らかです。とりわけてもその犠牲となるのは、社会的弱者である高齢者、障がい者、若者です。
 
 たとえば来年度は3年ごとの介護保険事業計画改定の年であり、県内各市町村の多くは、65歳以上の第一号被保険者の保険料値上げを予定しているようです。

 この保険料値上げに加え、小泉内閣の増税策によって、これまで住民税非課税だった高齢者が、収入は減るのに課税対象となることにより、県内においても5万6千人の高齢者の保険料段階が上がることが本会議答弁で明らかにされました。県が市町村とともに、きめこまやかな対応を主体的にすべきところ、05年度税制改定だけを対象に、2年間の政府による激変緩和措置だけでよしとする姿勢であります。

 激変緩和といっても負担増にかわりはなく、収入が増えるわけではありませんから、ほんとうに県民の立場に立って施策を展開しようとする姿勢がない、といわざるをえません。

 また、県保険医協会のアンケート調査によれば、介護保険施設で、居住費、食費の負担増が原因で退所した人は7施設で32人、退所を検討している人は11施設で32人、負担額を聞いて入所を取りやめた人が15施設で36人いたことが明らかになりました。

 県が詳細な実態調査に基づいて、その対応を市町村とともに予算編成にあわせてすべきところ、ここでも国が講じた低所得者対策で十分、という姿勢であります。

 国による恒久的な低所得者対策が不十分なだけでなく、この間の退所者には、住民税課税世帯の高齢者が多いというのが県のささやかな調査でも明らかになりました。「介護の社会化」をめざす介護保険というのであれば、現行の低所得者対策だけでは足りないことが明らかになったのだと思います。

 そもそも、40歳以上のすべての国民を対象に保険料を徴収し、自分でサービスが選べます、と宣伝されて始まったのが介護保険制度です。制度創設時とくらべて利用者や給付費がふえるのはあたりまえであって、保険料を取られてもサービスを利用できないことが問題なのです。現行制度のもとで、利用者の格差が広がっていることが問題なのです。
 
 また、障がい者をめぐっても、来月から障がい者自立支援法が実施されます。障がい者が人間としてあたりまえの生活をするための支援を、「益」とみなして負担を課す「応益負担」が最大の問題で、障がいが重い人ほど負担が重くなり、負担に耐えられない障がい者はサービスを受けられなくなる事態は必至ではないでしょうか。

 こうした事態が起きないよう、負担減免策や事業・施設運営、市町村支援などへの具体的財政措置が必要ですが、昨年10月から廃止した重度心身障がい者に対する入院時食事代助成を復活させることすらありませんでした。
 
 さらに、若者をめぐっても、たとえば高校進学率が97%を超え、半ば義務教育の状況に近くなっているもとで、県立高校授業料の免除生徒数がこの4年間で1.7倍になっていることを見れば、授業料免除の制度を充実・拡充させ、子どもたちの「学習権」の保証こそ大切であります。

 そんなときに、今年度は授業料の値上げ、さらには授業料未納者を、機械的には適応しないといいつつ、重罰を課せば未納が減るとばかりに学則に除籍を追加するなど、およそ教育的でないばかりか、子育て支援を柱とする姿勢に疑いすらもたざるをえません。
 
 子育て支援を真剣に考えるなら、医療費の無料化を義務教育終了まで拡充するなど、子育て家庭に対する支援、若者が育ちやすい環境をつくる施策を真剣に模索すべきであります。

 その一方、トラハイには今年度を上回る総事業費50億円、県の道路事業費が減っているなかで、一本のこの道路が占める割合は9%を超えています。本会議でもしばしば、各地域の生活道路整備の要望が出されますが、身近な生活道路整備が進まない最大の原因はここにあるのではないでしょうか。
 
 また同じように、計画を決めてしまったから、という理由で、小名浜人工島にも今年度と同程度の事業費をつぎ込む予定であります。今年度事業費総額は11億8800万円です。
 
 さらには、不要不急の最たる支出である首都機能移転対策費であります。いまや、「首都機能移転の意義、必要性はいっそう高まっている」という言葉ほど空疎なものはありません。
 
 「もったいない」が生きている社会づくりを進めるならば、こうした「もったいない」税金の使い方はきっぱりとやめ、県民の暮らしの実態に即し、暮らしと市町村応援にこそ、「粘り強くとりくむ」べきであります。
 
 来年度当初予算額は、8000億円台となりました。これは、13年前の93年度当初をやや上回る程度の規模です。

 しかしその内容を見ると、様変わりしてゆがんだ姿は、93年度当時の当初予算と比較すると歴然とします。歳入を見ると、借金である県債は、今年度より減らしたというものの、93年度と比較すると、比率にして6.1%から12.2%へちょうど2倍、額にして513億円から1062億円へ二倍を超えています。

 目的別歳出をみると、借金返済である公債費比率は8.3%から14.7%、93年度は金額にしてほぼ700億円であったものが584億円増えて1284億円となって1.8倍化、これは民生費と衛生費を合わせた比率の1.3倍、額にして300億円も上回っています。いうまでもなくこの最大の要因は、90年代半ばからの大型公共事業偏重の施策の結果にほかなりません。
 
 教育費は13年前よりも148億円の減額、財政構造改革プログラム実施前年の2001年度と比較すると、249億円の減額であり、少子化とはいえ、県として力を入れるという教育を、正教員ではなく講師で置き換えて安上がりにしようとしていないかが問われます。
 
 性質別歳出の人件費を見ても、13年前よりも78億円の減額、2001年度との比較でも293億円の減額であることにもその姿勢が反映されています。
 
 来年度予算案においてもムダ使いを温存し、安上がりの行政サービスと、職員削減や給与削減でこれを乗り切ろうとする姿勢が明らかであり、ゆがんだ予算構造をつくってきた財政運営にメスを入れる姿勢に欠けていると評価せざるを得ません。
 
 その姿勢を端的に示しているのが、昨年の県人事委員会勧告実施を前提とした議案です。
 
 昨年の勧告は、本年度の職員給与について三たび不利益遡及をくり返したうえ、来年度からの給料月額を平均4.8%引き下げ、「能力・実績主義」による「査定」賃金を導入する、というものです。
 
 その前提となった人事院勧告の最大の問題は、現に支給されている俸給水準を引き下げて生じた原資をもとに、地域給再編や「俸給表のフラット化」を行なうなどの点です。本県において「地域手当」の導入はなく、中高年層の職員にとっては最大7%のマイナス給与となる中高年いじめの最たるものです。激変緩和措置が盛り込まれるものの、端的に言えば、一般職員や地方の職員の賃金を引き下げ、地方から国に財源を引き上げ、中央官僚を優遇するもので、地方や過疎地の行政サービスや賃金は低くてよいとする地方切り捨て政策を、国の言いなりになって県が実施しようとするものではないでしょうか。
 
 公務員の賃金は、社会福祉協議会や病院、私立学校関係などの公務員に準拠する労働者に直接影響し、また、民間が賃金を決める参考になっていることが多いことから、公務員の給与表の引き下げは民間労働者のさらなる賃下げをもたらすことになります。

 経済財政諮問会議が、「国家・地方公務員の総人件費削減策を07年度以降の消費税率引き上げを含む増税と歳出削減の一体改革」と位置づけたように、この間の一連の公務員攻撃は「構造改革」を無理やり国民に押しつけようとする手段として利用されている点を見なければならないと私は思います。
 
 これを進めるために国は、国民のなかに、「公務員労働者と民間労働者」などの意図的な「対立」をつくって「分断」をはかり、この議論に乗る人のなかからは、格差が激しく、安定もしない民間賃金のなかでも、低いほうにあわせるべきだなどと、財界・大企業がもろ手を挙げて喜ぶような主張すらでてくる始末です。

 総人件費削減の先にあるのは、「公務・公共業務の解体」であり、全体の奉仕者としての公務員の変質です。公務職場では、業務の実施だけでなく、住民要求を把握したうえで政策形成にかかわることが期待され、公正・中立・安定・継続性のある業務を、組織として発揮することが求められます。公務の専門性も、こうした集団の中で育成、形成されるものだと思います。

 昨年の11月臨時議会でも指摘したように、「住民との連帯」「民間との連帯」を県が言うならば、イコールパートナーの公務とはいったいなんたるかを見つめなおし、県民の権利保障をになう公務の改善・拡充のため、公務員攻撃に反撃する気概をもつべきであります。 人事委員会勧告を受けた一連の条例、これと一体の退職手当に関する条例、また安易に職員を削減する条例を容認するわけにはいきません。
 
 また、私たちは、県立病院統廃合をすべきではなく、県が主体的に施設整備の改善・充実とともに医師の確保もし、県民医療を充実させる責務があることを一貫して主張してきました。

 最後に指摘したいのは、福島空港利用促進策にかかわる件です。来年度の利用促進関係経費は1億8700万円、管理経費が5億4100万円、それに対して使用料収入は1億3200万円です。こうした現実のもと、航空会社に対して空港使用料減免の大盤振る舞いを延長することが、路線維持の担保になるとは思えません。
 
 以上の理由から、知事提出議案第1号(06年度県一般会計予算)、第37号(福島空港条例一部改正)、第39号(県立病院事業設置等条例一部改正)、第43号(県職員定数条例一部改正)、第46号(職員給与条例一部改正)、第49号(一般職任期付研究員採用等条例一部改正)、第50号(一般職任期付職員採用等条例一部改正)、第51号(県職員退職手当条例一部改正)、第70号(県公営企業職員給与基準条例一部改正)、第71号(県立病院事業職員給与基準条例一部改正)、第74号(県教育関係職員定数条例一部改正)、第75号(県市町村立学校職員給与等条例一部改正)、第77号(外国派遣市町村立学校職員処遇条例一部改正)の13件に反対を表明し、討論を終わります。                                          
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