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県議会奮戦記 >>> 2005年12月県議会知事提出議案第1号ほか反対討論

2005年12月県議会知事提出議案第1号ほか反対討論
12月県議会反対討論
2005年12月19日
長谷部淳

 日本共産党の長谷部淳です。

 日本共産党を代表し、議案について意見を述べさせていただきます。

 まず、議案第1号の補正予算案のなかに、研修医がへき地などの一般家庭でホームステイをしながら診療の能力向上を図る事業や、障がい者の自立と社会参加を促進する事業、また、県民生活に密着した道路・河川整備などの生活密着型の公共事業などの予算については当然に評価するものです。

 しかし最大の問題は、臨時議会での県人事委員会勧告実施条例と一体となった補正であることです。これに反対する理由は繰り返しません。

 ただ、この実施は、公務員賃金準拠の病院や私立学校関係の労働者だけでなく、民間全体の賃金の抑制と消費支出の抑制、県内景気へのマイナス影響を与え、そして地域経済をさらに疲弊させることにつながることは明らかであって、こうした愚策を繰り返すべきでないことは強調しておきたいと思います。

 まして、定率減税の半減が実施されるのは来年です。高齢者の年金課税では、今年所得税が増税され、来年は住民税が増税されます。住民税増税は、国民健康保険料や介護保険料の引き上げに連動します。まさに雪だるま式に負担がふえることがわかっているのです。業者のみなさんには、消費税の免税点の引き下げによる打撃が深刻になります。

 そのうえ政府の与党は、「サラリーマン増税をする政府税調の考え方はとらない」「サラリーマン増税はしない」とした自らの公約をいとも簡単に破り、所得税・住民税の定率減税の廃止、そして07年度には消費税の税率引き上げを含めたいっそうの大増税をするという方針を、先週の15日に打ち出しました。

 今回の人勧実施の補正予算が、県内庶民家計への新たな打撃的追い打ちの契機になることは間違いない、と指摘したいと思います。
 
 次に、議案第16号「ピンクビラ等の規制に関する条例」案についてです。

 制定の趣旨には賛成です。しかしながら、軽犯罪法などの既存の法律、あるいは青少年健全育成条例やその改正で対処できるのではないか、といった疑問があるうえ、条例案の内容には問題が含まれています。

 いうまでもなく罰則を伴う犯罪行為の規定は、国民にとって、ひとつの意味に限定され、明確なものでなければなりません。それは憲法第三一条に定められた罪刑法定主義・適正手続主義からの当然の要請であり、明確性の理論といわれるものです。すなわち、たとえばスピード違反が、「危険な速度」といった規定であってはならず、「時速五〇km以上」という一義明白な規定でなければなりません。

 その点、条例案第四条の各項に問題はないと思います。

 ところが問題は第五条です。第五条は、四条に規定する行為を行なう「目的」で、所持することを禁止しています。「目的」はもちろん行為ではありません。人間の内心のことがらであり、外形的・客観的に判断できるものではありません。したがって、その判断基準も主観的にならざるをえません。たとえば、一枚のビラを掲示の目的で所持したとの認定はできるのでしょうか、できないのでしょうか。

 おそらく一枚であれば認定できないと思うのですが、一〇枚ならばどうなるのでしょうか。あるいはまた、所持していた人物が、「これから新幹線に乗って東京へもっていく」とか「高速道路で仙台へ行く」と言う場合はどうなるのでしょうか。ちなみに、刑法第一七五条が言うわいせつ物の「販売の目的」は、外国で販売する目的はふくまない、とするのが最高裁判例です。県の条例ではどうなるのでしょうか。客観的基準が明らかではないのです。

 各国の人々は、国の最高法規である憲法を創りあげる際にも、犯罪と刑罰とに関する法律を創りあげる際にも、こうした基準を営々と築き上げ、今もその途上にあります。

 先ほどふれた日本の刑法第一七五条は、わいせつ文書の頒布・販売などを全面的に禁止しています。これに対し、この規定はあまりに広範な規制を定めているために憲法二一条に違反しており、頒布・販売などの仕方に着目して特定の行為だけを規制すれば十分である、という有力な主張が憲法学会のなかにもあるのです。

 なぜこうした有力な主張があるかといえば、ことは表現の自由にかかわるからです。表現の自由は、人権のなかでも優越的地位を占める、とされています。
 
 それは、仮に表現の自由以外の人権が権力によって抑圧された場合、残された表現の自由によって、権力を交代させる民主政治の最後のよりどころとなる自由だからであります。同時に、それだけに、街の美観や善良な風俗や交通秩序の維持などの一見もっともらしい理由で、とりわけ不当な制限を受けやすい自由だからこそ、その制限の合憲性はほかの人権よりもいっそう厳格に判断されなければならない、ということです。
 
 ですから先ほどいった明確性の理論に加え、表現の自由を制限する目的の合憲性については「明白かつ現在の危険」というきわめて厳格な基準、さらに表現の自由を制限する手段・程度についての合憲性は「より制限的でない他の選びうる手段」の基準が適用されるべきだ、とされています。
 
 こうして、条例案の第五条には重大な疑問があります。第三条にある「県民の権利を不当に侵害しないように留意」するのは当然であって、この三条が五条の恣意的解釈・運用によって侵害されるおそれがあるのです。

 したがって、この第五条とその罰則である第九条3項の削除を求めます。さらに付け加えるならば、現代において、情報提供の手段として、携帯電話、インターネットが存在します。これらの規制を具体的に検討することなく、ビラ規制のみに腐心することは、条例制定趣旨の実効性への疑念ももたざるをえません。
 
 次に議案第65号「和解について」であります。

 これは、97年4月から2000年5月まで、県が発注した航空写真測量業務85件、平均落札率95.97%だったものが談合と認定され、談合が排除されたその後の期間の同種の契約49件の平均落札率72.64%との差、23.33%、金額にして2億9000万円弱を関係8社に損害賠償請求した裁判にかかるものです。

 談合業者が談合を談合と認めないため、最終契約額の10%で手を打ち、1億7000万円あまりの県民の税金を談合業者のために放棄する、というものです。

 だまされるほうが悪いといわんばかりのこんなことがまかり通るならば、公正な競争を阻害する談合を事実上免罪することになります。徹底して不正を暴くことこそ、県民の税金をあずかる行政としての責任ではないでしょうか。
 
 議案第55号、県が行なう建設事業などの負担を市町村に求めるべきではありません。
 
 以上、知事提出議案第1号ほか、3件に反対を表明いたします。
 
 最後に請願についてです。まず、受理番号139「重度心身障がい者医療費補助事業の『見直し』をやめ、入院給食費を自己負担とすることの撤回を求めることについて」ですが、10月から始まっているいまだからこその切実な声です。

 障がい者の暮らしに真摯に目を向けるなら、障がい者の声に真摯に耳を傾けるなら、障がい者をささえる施策がお金で手に入れるサービスだといわんばかりの法律が通されてしまったこんなときこそ、入院給食費の補助を復活させるべきではないでしょうか。

 同じく請願159「放課後児童対策の充実について」ですが、子どもの安全・安心な放課後の時間の確保、子どもたちに対して適切な遊びや生活の場を保障する対策をより充実させることは当然のことではないでしょうか。
 
 いずれも障がい者と子どもたちの福祉の向上には不可欠であり、ユニバーサルデザインに彩られた社会の実現への一歩に過ぎないもので、不採択とする道理はありません。

 以上の2件の請願は採択すべきことを申し上げ、討論を終わります。
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