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かけはし >>> 憲法12条と99条と  08.5.3 憲法シンポでの発言

憲法12条と99条と 08.5.3 憲法シンポでの発言
後期高齢者医療制度が4月から始まりました。

 一昨年(2006年)6月、自民・公明が強行採決した「医療改革関連法」に基づいて、「医療費適正化計画」、「医療計画」、「特定健診・特定保健指導実施計画」が都道府県を単位に作成が義務づけられ、国のねらいを都道府県が具体化させられるしくみがつくられました。

 後期高齢者医療制度は、国のそのねらいを確実にするために導入されました。
 
 自民党や公明党は、「高齢者を守る制度だ」「高齢者がきめ細かい治療が受けられる制度だ」といっていますが、はたしてそうでしょうか。

 「医療改革関連法」の目的は、医療費の削減です。厚労省は、現在約33兆円の医療費が、今年58歳の人が後期高齢者の仲間入りする2025年には56兆円になってしまうので、これを8兆円削って48兆円までの伸びに抑えたい、ということなので、正確にいうと「抑制」かもしれませんが、高齢者がふえることで医療が必要な人がふえるのに抑制するんですから、実質的には削減といっていいと思います。

 こうして医療費を8兆円削減するうち、5兆円を後期高齢者医療で削減する計画です。

 ですから「高齢者を守る」とか「きめ細かな治療」のための制度と説明することは、「偽装表示」と言っていいと思います。
 
 ところで医療は、赤ちゃんであろうと、学童であろうと、労働者であろうと、高齢者であろうと、心身の特性に合わせて行なわれることは当然のことです。

 ところが国は、75歳以上の人たちへの医療についてはわざわざ、心身の特性にふさわしい医療でいい、として、保険も別にしてしまいました。

 75歳以上であっても、現役で働いて、3月までは社会保険本人の方もいらっしゃいました。老人会などの役員をされたり、ボランティア活動をしたり、サークル活動に精を出す高齢者も多くいらっしゃいます。

 しかし国は、こうした元気な高齢者もひっくるめて、「治療に手間ひまがかかり、認知症が多く、いずれ死ぬ」、これが75歳以上の「心身の特性」だ、というのです。
 
 そういう理屈で、外来・入院・在宅・終末期のすべての医療に、74歳以下の医療とは差別する項目をこの4月から設けました。

 たとえば外来では、「後期高齢者診療料」というものを設けました。複数の医療機関を受診させないように「主治医」を1人に決め、医療費もひと月6,000円の定額です。自民党はパンフレットまで作って、「担当医を持つことが可能になります」として「きめ細かい治療」が受けられるように描いていますが、実際には全国各地の医師会などが「必要な治療や検査が受けられなくなり、生命にかかわることも十分考えられる」としてボイコット運動が起こっているシロモノです。
 
 入院では、「退院支援計画」を立てて早期に退院させれば報酬が上乗せされますから、いわゆる「病院追い出し」が促進されるしくみです。
 
 終末期では、延命治療の意思を事前に確認し、文書に残して「過剰医療」はしない確約をとれば報酬をもらえる、というしくみです。患者や家族に治療中止を強制しかねないものです。まして終末期というのは、高齢者だけの問題ではないのに、後期高齢者だけに持ち込まれました。
 
 容赦なく取り立てられる保険料が際限なく上がっていく問題もあります。介護保険料は3年ごとに値上げされ、2003年、2006年と値上げされましたが、いわき市では2度目の値上げが約55%アップで基準額が4,200円を超え、県内で最高額になっています。後期高齢者医療の保険料は、後期高齢者の人口増加と、後期高齢者の医療費の増加に応じて、2年ごとに自動的に引き上げられるしかけです。
 
 厚労省の人口推計と、同じく厚労省が設定している一人当たり医療費の伸びをあわせて計算すると、共産党の小池晃参院議員が国会で示しましたが、2025年には現在の保険料の2倍以上になります。全国平均では現在は年間7万2,000円ですが、段階の世代が後期高齢者医療保険料を取られるときには年間16万円になります。
 
 この制度は、人の尊厳を著しく傷つける点で、「個人の尊重」を定める憲法13条違反です。年齢によって人を差別する点で、差別を禁じている憲法14条違反です。社会保障を後退させている点で、社会保障の増進を定める憲法25条違反です。こんな憲法違反の制度は即時廃止させなければなりません。
 
 憲法が指し示す社会保障としての高齢者医療の姿は、「長生きしておめでとうございます。これからは最高の医療を安心して受けることができます」という医療です。政治はそういうしくみをつくることが憲法上の要請だと思います。
 
 そこであらためて、あたかも社会保障が貧困を作り出しているかのような現実のもとで、この現実をどうとらえればいいのか、われわれ国民はどうしたらいいのか、憲法上の課題として私なりに整理してみたいと思います。
 
 憲法25条が社会保障について書かれた条文ですが、第一項が人権宣言、第二項が一項に対応した国の責務です。生活上の問題は、社会保障の諸制度によって、権利として保障される、とされます。
 
 それではその権利について憲法は何を語っているでしょうか。
 
 憲法11条は「侵すことのできない永久の権利」と書き、その理由を97条が「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」だからだと書いています。

 だからこそ、13条で国民は「個人として尊重されること」、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は、「国政の上で、最大の尊重を必要とする」とされ、14条で国民は「政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」としているわけです。
 
 しかし憲法は、こうした権利は無条件に権力が保障するとはとらえておらず、逆に、権力によって侵害されることを認識しており、だから12条で「国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」、と国民に要請しているわけです。
 
 また99条は「公務員の憲法尊重擁護の義務」を定めていますが、ここに「国民」はわざと書いてありません。憲法上、国民は憲法尊重擁護を義務づけられているわけではなく、公務員に憲法を尊重擁護させる権利があるわけです。
 
 権力と国民との力関係によって、国民の権利は前進したり後退したりしているので、やはり私たちは憲法に依拠して、不断の努力で前進させなければならないし、後期高齢者医療制度は廃止させなければならないと思います。
 
 
 参照
 
 憲法第25条「@すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。A国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」
 
 憲法第11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」
   
 憲法第97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すこと信託されたものである」
 
 憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」
 
 憲法第14条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」

 憲法第12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」
 
 憲法第99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

 憲法前文「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
   
 「恐怖」とは、専制・暴虐・抑圧・暴力などをさし、その最大のものは戦争です。
   「欠乏」とは、餓え・渇き・病・衰弱・極貧など、「貧しさ」をさします。
 日本の国づくりの方向は、これらの「恐怖と欠乏から免れ」ることであり、その国家のいちばん大事な仕事は「平和のうちに生存する権利」を保障することです。
 
 憲法第9条「@日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。A前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」
 
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