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後期高齢者医療制度について
医療給付費削減の手段

 後期高齢者医療制度とは、来年(2008年)4月から、75歳以上を対象として始まる独立した医療制度です。
 ちなみに、05年の日本人の平均寿命は男78.53歳、女85.49歳であり、単純にこの年齢で見ると、男性は後期高齢者医療制度に加入する期間は4〜5年、女性は11〜12年間支え続けなければなりません。
 昨年6月に「医療改革法」が与党によって強行されましたが、その目的達成を確実なものとするために導入されました。
 「医療改革」の「目的」というのは、医療給付費を2025年までに8兆円削減することです。
 「削減」の内訳は、「患者負担の引き上げ」で1兆円、「診療報酬の引き下げ」で1兆円、「生活習慣病の予防策で有病者・予備軍を25%減少」で2兆円、入院日数の短縮・ベッド数削減で4兆円です。
 都道府県単位で「医療費適正化計画」、「医療計画」、「特定健診・特定保健指導実施計画」を作らせ、都道府県に競い合わせて目的を達しようとするしくみです。
 
運営するのは「広域連合」
 
 後期高齢者医療制度の運営主体は、都道府県を単位として、全市町村が強制加入する「広域連合」です。ですから範囲は県と同一ですが、県は広域連合に入ってはいません。私は議員のときに、県も広域連合に自ら加入して、市町村と広域連合を支えるべきだと言いましたが、県はその意見を受け入れていません。本県では、今年2月1日に福島県後期高齢者医療広域連合が発足しました。
 後期高齢者医療制度の根拠法となる「高齢者の医療の確保に関する法律」(「老人保健法」を改めた)では、老人保健法第一条の「目的」にあった「健康の保持」は削られ、その代わり「医療費の適正化」が入れられました。
 また、健診などの保健事業は広域連合の「努力」にゆだねられました。
 
保険料は死ぬまで支払い
 
 この制度の対象者となるのは、75歳以上の全員と、65〜74歳で障害認定1〜3級を受けた高齢者です。生活保護世帯の後期高齢者は除外されます。いわき市では、08年4月時点で、障害認定者約3,500人を含め、約4万3,000人を見込んでいます。
 75歳以上であれば、現在国保であろうと、被用者保険本人であろうと、被用者保険扶養家族になっていようと、全員強制加入です。
 いわき市では、約4万3,000人の加入者のうち、2割弱の約7,700人は、現在は保険料負担をしていない高齢者と見込んでいます。
 保険料は、介護保険同様、年金月額1万5,000円(年額18万円)以上は、機械的に天引きします。これを「特別徴収」といいます。いわき市では、被保険者数の約90%は天引きと見込んでいます。保険料は死ぬまで徴収され続けます。
 保険料額は都道府県の広域連合ごとに、医療費実績の高低を反映して決めるので、都道府県でバラバラです。
 
低所得者に過酷な仕打ち
 
 保険料は、「応益割(均等割):応能割(所得割)=50:50を標準とする」よう政令で定められており、応益割は最低0円、最高で3,100円。厚生労働省の試算では、厚生年金208万円の受給者を「平均的なケース」として、応能割3,100円+応益割3,100円で月額6,200円、年額で7万4,400円と計算しています。
 また、基礎年金78万円の受給者は月額900円、年額1万800円と計算されています。
 低所得者に対しては保険料軽減策をとりますが、国民健康保険と同様、滞納した場合は「短期保険証」の発行、1年を経過して「特別な事情」が認められなければ「保険証」の返還を求め、「資格証明書」を発行、1年6か月経過すると「保険給付の一時差し止め」を行なうことが広域連合に義務づけられています。
 「資格証明書」を医療機関窓口へもって受診した場合、全額自己負担となります。
 保険料を支払うのも困難な低所得者にこういう過酷な仕打ちをするしくみを最初からつくっているわけです。
 後期高齢者医療制度の財源は、保険料が1割、被用者保険・国保が加入者数に応じて負担する「支援金」が4割、公費負担が5割でまかないます。
 ちなみに現役世代の健康保険による「支援金」は、各保険者の健診「受診率」、保健指導「実施率」、有病者・予備軍「減少率」の各指標に基づき、上下限10%の範囲内で加算・減算するしくみです(2013年度から)。
 
「差別医療」の導入
 
 年金天引き制や過酷な保険料だけでなく、「心身の特性にふさわしい」医療という口実で、通院でも入院でも、疾患や治療方法ごとに「包括定額制」が考えられている問題もあります。たとえば高血圧症の外来は検査・注射・投薬などすべて含めて1か月○○円限り、と決めてしまいます。
 75歳という年齢で区切って、それ以上は別の医療のしくみ、というのは、明らかな差別医療だと思います。
 このことは、後期高齢者を多く診る医療機関の経営は立ち行かないことを意味します。今年と来年と、同じ医療・労働をしても、75歳以上の人に対する医療に関しては、決められた「定額」以上は医療機関の収入にならないからです。
 患者さんにとっても、医療機関にとっても、痛みばかりが押しつけられる制度というほかありません。
 また、高齢者があらかじめ「かかりつけ医」に登録することで、「かかりつけ医」以外の医療機関への受診を制限したり、「かかりつけ医」への受診回数も制限したりすることも考えられているようです。
 高齢者は医療機関の「はしご」が多い、と厚労省は見ているようですが、内科・眼科・整形外科と受診して自らの健康を維持することは当然のことだと思います。
 
高齢者の生活に即した制度とするのは世論
 
 ところで、運営主体になる「広域連合」に議会はありますが、議員は「各市町の長及び議会の議員」から選ばれるため、これだけでは当事者である後期高齢者の意見を直接反映するしくみではありません。
 保険料などの条例は、今年の11月に広域連合議会で決められ、来年3月には加入者に保険料額が通知され、保険証が発行される予定です。
 課題山積のまま、来年4月スタートです。
 問題をかかえたままのスタートとさせないために、高齢者の生活実態・収入実態に即した保険料額の設定や減免制度の整備、資格証明書の発行はさせないこと、希望者全員が受けられる健診のしくみ、高齢者の意見を反映できる広域連合の運営のしくみを作らせるなど、世論で動かしていかないとなりません。

 
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